
交通事故に遭った際、まず気になるのが「治療費は誰が負担するのか?」という問題です。
事故後の治療には、病院や整骨院での診察・リハビリなど、様々な費用が発生します。負担方法を知らないと、保険会社とのやり取りで不利益を被る可能性もあります。今回は、交通事故の治療費の負担について詳しく解説します。
1. 交通事故の治療費は基本的に加害者側の負担

交通事故における治療費は、基本的に加害者側(相手方)の自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)から支払われます。
これは、法律で定められた強制保険で、事故の被害者が最低限の補償を受けられるようになっています。
具体的には、被害者の治療費、慰謝料、休業補償などが対象となり、上限120万円まで補償されます。
◇ 自賠責保険でカバーされる費用

- 治療費(診察料・検査料・処方箋料など)
- 通院費(タクシー代、公共交通機関の交通費)
- 入院費(個室を除く通常の入院費)
- 看護料(自宅療養が必要な場合の看護サービス)
- 休業補償(仕事を休んだ際の補償)
ただし、自賠責保険には120万円の限度額があるため、それを超えると他の方法で支払う必要があります。
2. 限度額を超えた場合はどうする?
自賠責保険の補償額(120万円)を超えた治療費は、加害者側の任意保険でカバーされることが一般的です。
任意保険には、以下のような補償が含まれます。
◇ 任意保険で補償されるもの

- 自賠責保険を超えた分の治療費
- 後遺障害の補償
- 逸失利益の補償(働けなくなった場合の損害補填)
加害者が任意保険に加入していれば、これらの費用も請求可能ですが、保険会社との交渉が必要になるケースも多いため、注意が必要です。
3. 加害者が無保険だった場合はどうなる?

もし加害者が自賠責保険に未加入、または任意保険に入っていない場合、被害者は自分で治療費を負担しなければならない可能性があります。
この場合、以下の方法で費用を補填することができます。
◇ 交通事故の被害者が利用できる保険制度

- 健康保険の使用
通常の健康保険を利用して、自己負担を3割に抑えることが可能。ただし、事故による治療で健康保険を使う際は、事前に健康保険組合に「第三者行為による傷病届」を提出する必要があります。 - 労災保険の利用
通勤中や業務中の事故であれば、労災保険を利用できます。会社を通じて申請することで、自己負担なしで治療を受けられます。 - 政府の救済制度(政府保障事業)
ひき逃げや無保険車による事故の場合、政府が運営する「自動車損害賠償保障事業」から補償を受けられる制度があります。 - 自分の任意保険(人身傷害保険)を活用
自身の自動車保険に人身傷害保険が含まれていれば、加害者が無保険でも治療費を補償してもらえます。
4. 自分の健康保険を使ったほうが良いのか?

交通事故の治療には、健康保険を使わないほうが良いという意見もありますが、実際にはケースバイケースです。
メリットとデメリットを理解した上で選択しましょう。
◇ 健康保険を使うメリット
✅ 治療費の自己負担が3割で済む
✅ 保険会社とのトラブルを回避しやすい
✅ 治療が長引いた場合の金銭的負担を軽減
◇ 健康保険を使うデメリット
❌ 事故の治療は自由診療が多いため、健康保険適用外の治療が受けられない場合がある
❌ 後遺障害認定の際に、治療記録が重要となるため、健康保険での治療が影響することもある
5. 保険会社とのやり取りの注意点

保険会社はできるだけ支払額を抑えようとするため、治療費の負担について交渉が必要になることがあります。以下の点に注意しましょう。
✔ 示談の前に治療を終える
示談成立後に治療を続けると、自己負担になることがあるため、治療が完了するまで示談をしないようにする。
✔ 保険会社の担当者の説明を鵜呑みにしない
「もう治療費は支払えません」と言われても、納得いくまで交渉し、必要に応じて弁護士や専門家に相談する。
✔ 診断書をしっかりと取得する
事故後の症状が悪化した場合、適切な補償を受けるために診断書が重要な証拠となる。
まとめ
交通事故の治療費の負担は基本的に加害者側の自賠責保険がカバーしますが、上限額があるため、場合によっては任意保険や健康保険、自分の保険を活用する必要があります。
加害者が無保険の場合は、自分で治療費を負担しなければならないケースもあるため、事前に利用できる保険制度を把握しておくことが大切です。
また、保険会社とのやり取りや示談交渉には慎重になり、必要に応じて弁護士や専門家に相談することで、不利益を被らないようにしましょう。